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つなぐ広げる「オレンジの輪」朝刊シリーズ

認知症とともに in メディアシップ

2017年10月17日


 「認知症とともに in メディアシップ」(新潟日報社主催)が9月17日、新潟日報本社で開かれました。漫画家・岡野雄一さん原作で認知症の母親との日常を描いた映画「ペコロスの母に会いに行く」の上映会や、認知症と地域のあり方をテーマにしたパネルトーク、認知症の人が見ている世界を体感する「VR(仮想現実)体験会」などを通し、のべ500人の参加者が認知症への理解を深めました。



パネルトーク

 「認知症の人・介護者とともに歩む地域へ」をテーマにしたパネルトークは、本紙に「ペコロスの陽だまりの時間」を連載中の岡野雄一さんと、「家族の会」県支部代表、医療・福祉の専門家が当事者の尊重と介護者の支援、地域のあり方について意見を交わしました。


コーディネーター

石原亜矢子

新潟日報社論説編集委員


認知症の人・介護者とともに歩む地域へ


少しの変化でも相談を。

早期診断で早期治療、多職種によるフォローが重要です。

白根緑ヶ丘病院院長・認知症疾患医療センター長

佐野英孝さん(新潟市南区)


保護対象者ではなく「生活者」と理解を。

自分が使いたいサービスを実現したいです。

桜井の里福祉会専務理事

佐々木勝則さん(長岡市)


自分の時間作り、安らぎを得て介護に戻る

「プチ親不孝」で息抜きして。

「ペコロスの陽(ひ)だまりの時間」を

本紙生活面で連載中の漫画家

岡野雄一さん(長崎市)


仲間外れにしない、余計なうわさ話をしない。

今すぐできる「しない協力」です。

認知症の人と家族の会

新潟県支部代表

金子裕美子さん(糸魚川市)



国際アルツハイマー病協会国際会議が今春、京都市で開かれ、

金子さんは実行委員として関わられた。


金子 夫と実母の2人を在宅介護しており、介護者日本代表として加わりました。全体では世界から4千人が参加し、うち認知症の本人は200人でした。

 日本での開催は2004年以来2度目。前回の認知症当事者団体は私たち「認知症の人と家族の会」だけでした。今回は男性介護者の会や若年認知症の会、レビー小体型認知症の会、認知症本人の会が加わり、当事者5団体でワークショップを持ちました。

 認知症の人への今までのイメージを払しょくしてほしい。認知症になっても尊厳を持って最期まで過ごすことは可能です。「できる事を奪わない。できない事を強いない」と伝えたいです。

佐野 認知症の人とその家族へのアンケート調査で、自分の変化に気付いてから確定診断までの期間が平均15カ月と時間がかかっています。少しの変化でもかかりつけ医に相談を。早期受診で早期治療や介護保険の早い導入を検討できます。

 認知症講座は多くありますが、認知症の本人のための講座は少ない。本人参加の機会は大事です。また往診で本人の生の言葉を聞き、その人生に共感することが尊敬につながり、治療のヒントも得られます。

 認知症告知は本人との信頼関係が前提。早期診断が早期絶望につながらないよう、告知後は本人と家族に病状の経過など丁寧に説明し、多職種によるフォローや継続的なケアが重要です。

佐々木 認知症は65~69歳で2%台ですが、85歳以上で50%と年齢を重ねると確率が高くなる。だれもが「自分のこと」として考える必要があります。認知症になっても「自分のことは自分でしたい」と考える人が圧倒的に多い。自分が使いたいサービスを実現したいと考えています。

 またケアする側が認知症の人を「生活者」ではなく「保護対象者」と勘違いしている。理解の仕方から変えていかないといけません。

 日本認知症ワーキンググループで声を上げている認知症の本人たちは「助けて、支援して」ではなく「共にパートナーとして歩もう」という姿勢です。一緒に考えながらやっていける基盤ができればいいですね。

岡野 60歳を過ぎて漫画家になれたのも3年前に亡くなった母のおかげ。私の漫画で「目の前の老人に思いをはせる」ことを若い介護士に教えていると聞き、背中を押されています。

 一緒に5年暮らしました。しっかり者の母が「ほどけていく」姿を見て、汚れたトイレの掃除をしながら、「こんなになるまでなんで生きていなくてはいけないんだろう。死ねばいいのに」と。そういう瞬間も何度かありました。

 脳梗塞後に施設に入った母は8年目に胃ろうを造設。その1年半後に亡くなるまで、死ぬ一瞬を超スローペースで延ばしたようでした。

 「1日でも長く生きていてほしい」と胃ろうを選択したことが正解だったか、自分がきちんと母をサポートできたか、自信はありません。入所させるまでと胃ろうを選択するまで、それぞれ1カ月ほど迷いました。その時間が母への思いを深くしてくれたのではないかと今は思っています。


介護家族の置かれている状況や、介護サポートについてお話しください。


佐々木 「介護は大変になってきている」が私の結論。現代の要介護世帯は独居がトップで三世代同居は平成13年に比べ半減。一人が多数を介護する「同時多発介護」の時代です。

 昔の大家族時代の役割を現在の少人数家族に負わせようとする無理もあります。「家族だから」という強要は、介護者を追い込んでしまう。「少しでも楽できるところは楽する」ことです。

佐野 家族教室や家族会など、思いを言葉にできる場が必要。抱え込み過ぎると介護者が抑うつ的、アルコール依存になってしまうケースも。新潟県人は我慢強いが、周囲が気付き、専門職は連携して介護者の話を聞き出すことが重要です。

金子 1980年に発足した全国組織「家族の会」。新潟は96年の発足です。つどい、会報発行、電話を含む相談の3本柱。県内では9カ所で毎月つどいを開催しています。「TSUDOI」として国際的に通用する言葉になりました。

 つどいは情報交換や、辛さを吐き出し、心の健康を保つ貴重な場。「家族の会」発足以来37年間、会員は全国で1万1千人ほどいますが、介護が原因の殺人や心中、自殺など1人も犠牲者を出していません。心を支えることがいかに大切か分かります。

 年1回のリフレッシュ旅行で、また介護を頑張ろうという気持ちになれます。

岡野 自分の時間を作り、少しでも安らぎを得てから介護に戻る「プチ親不孝」で息抜きしてほしい。自分が漫画を描く時間がそうだったし、施設でプロの手に委ねるのも同じ。介護者がプチ親不孝で力を得て自分を保ち、また介護に向き合うことをお勧めしたいです。


当事者と介護者を支える地域のあり方について、考えを聞かせてください。


佐野 2年ほど前から全国で「認知症初期集中支援チーム」が立ち上がりました。新潟市は中央区と南区に設置しています。徘徊(はいかい)し行方不明後に亡くなるケースの4割が軽度の認知症。詐欺・訪問販売被害や、危険運転による事故も軽度の人が多い。地域包括支援センターや認知症疾患医療センター、専門職などのスタッフによる家庭訪問で早期発見、早期対応を目指しています。

岡野 母の徘徊が始まったのを教えてくれたのは、若いころ大嫌いだった、すぐ話しかけてくる近所のおばちゃんたちでした。どれほど母のナビゲータになってくれたか。認知症の人を知っていて、徘徊を普通に教えてくれる地域であればいいと願っています。

金子 今すぐできるのは「しない協力」。それは認知症の人と家族を「仲間外れにしない」「余計なうわさ話をしない」ことです。

 認知症になっても心は生きて、感じています。本人も介護者も「生きていて良かった」という人生の締めくくりができたら幸せです。

佐々木 施設をどうやったら「地域の共有財産」にできるかがテーマ。うちは近所の人の要望で、浴室を開放して公衆浴場にしました。常設の市で利用者が買い物もします。災害時の福祉避難所の指定も受けました。入所者、通所利用者が外出可能で、今までの生活が継続できる施設にしています。

 一人一人ができることをしながら、認知症の人と一歩ずつ共に歩み、受け入れ、声を掛けることができる地域にすることが大切です。




認知症サポーター養成講座


正しい知識を身につけることが、認知症サポーターの第一歩。


 新潟県介護福祉士会の研修委員長、磯部陽介さんが講師を務め、130人が受講しました。前半は認知症の原因となる主な病気や認知症の人との接し方などを聴講。後半は「財布がなくなった」「食事したことを忘れてしまった」などの場面を設定した2人1組の演習で、認知症のお姑さん役と介護者のお嫁さん役を台本に沿って演じました。

 受講者は「どちらの立場も辛いと感じた」「コミュニケーションの取り方が大切と分かった」と実感した様子。最後に認知症サポーターの証である「オレンジリング」を受け取りました。磯部さんは「認知症サポーターは特別なことをする人ではありません。温かい目で見守ることから始めてください」と締めくくりました。

 養成講座の後には、RUN伴2017新潟魚沼エリアボランティアによる「認知症予防」をテーマにした紙芝居も上演されました。



認知症VR体験会


症状は記憶障害だけじゃない。最新技術で認知症を体験する。


 一口に認知症と言っても、その症状は千差万別。100人いたら、100通りの認知症があるとも言われます。体験会ではVR(バーチャルリアリティー)機器を使い、認知症の人にはどんな風に世界が見えているのかを学びました。

 たとえば、介護施設の送迎車から自宅前で降りる場面。なんと本人が立っているのはビルの屋上でした。隣にいる施設職員から「大丈夫だから、足を出しましょう」と声をかけられますが、前に進めば真っ逆さまに落ちてしまうのです。動けずにいると場面が切り替わり、そこは車から降りた地面だったという映像です。これは「視とのこと。周りにとってはなんでもない移動でも、認知症の人は恐怖と戸惑いを感じていたのです。参加者からは悲鳴も上がりました。

 講演した株式会社シルバーウッドの下川原忠道代表取締役は「体験すれば、辛さに共感できる。共感できれば行動も変わる。認知症になっても問題なく生きていける社会にしたい」と訴えました。

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